: | tourarchive | : | 2006 |
小椋選手は練習をたくさんされているようで、上半身の体の形も徐々に変わり、体重はキープしてという事で、スタミナの部分は心配しなくて良いのかなという所は見受けられました。ネツラー選手は得意の思い切りの良い攻撃というのが真骨頂ですが、スーパーヘビー級と言えども、おおよそ40kgの差がありますから、この体重差というのは試合の大きな要素で、ネツラー選手がこの大きな男にどう対処するのか、スーパーヘビー級においてフットワークというものをどう敢行していくのかというところが一つの見所ではないかなという試合でした。 序盤、少しの距離を取りながら、前後にゆっくりとしたフットワークをとる小椋選手の前足が着地した時に、ネツラー選手の左のクロスのローキック辺りから幕開けをしていきます。前足を活かせない様にしてという事ですが、総合格闘技においては、このローキックは意外に諸刃の剣です。うかつに入ろうとすると、無防備でカウンターを取られてしまうので、そういう意味では思い切りの良いローを打ち込まなくてはいけない事と、ノーモーションで打たなければならない事、そういうところではネツラー選手がまずまず序盤から自分のペースを掴みつつあり、それを嫌い全体的に時計と逆回りの、左オープンで回る形の小椋選手をネツラー選手がそれを追いかけながら右に右に動いて行く形でした。その中でやはり気になったのは、小椋選手が頭を振る事で、上体でフットワークを使ってしまっていて、デビュー戦の時の足で押す様な、元力士だなという足腰の鋭さが消えているところに懸念をしましたが、まさにそんなところで電光石火のちょっとフェイントをいれたネツラー選手の右ストレートが鼻柱に思い切り入りました。しかもネツラー選手の場合は、パンチの当たった後軽く引きますが、この時にパンチの威力が出るタイプです。打ち抜くタイプ、引くタイプがありますが、ネツラー選手は引くタイプの様で、その形では十分過ぎる位、上手く押し込んでから引いた事で、思いの他小椋選手は頭が揺さぶられてしまった様で、そのまま後ろにもんどり倒れるという形で、本当にワンパンチでした。ネツラー選手もその後二撃目を打ち込みますが、倒れていく小椋選手をかすめるというパンチでした。映像をみていただくと、本当に小椋選手はワンパンチで倒れてしまいました。その後結構意識が遠のいてしまい、ドクターが直ぐに入り、私も直ぐにリングに入り、意識を確認するのに、2〜3分ほどかかったと思います。それから頭の位置を変えて、意識の戻りつつあるところで頭を少し上げ、口の中に少し血の様なものが見えたので、頭を起こしてみたら、両方の鼻穴から滝の様な鼻血が出始めて、この時点で鼻骨骨折だなと思いました。体が大きいので仰向けに寝かせて、顎が上がった状態で寝てる様にしてしまうと、鼻孔の奥に血が溜まって行き、呼吸困難に陥り、良いことではありません。そういう事で鼻血を出さざるをおえません。結局、意識も大きく回復し難かったので、そのまま担架で退場という様な試合でした。ダメージは骨折と出血が中々止まらないという事で、血管を含めた軟部組織なりが大きく破損したという様な状況でした。 ネツラー選手は、ワンパンチで行けるという事です。それもそんなに思い切り良く狙って行ったパンチではありませんが、この感覚を憶えると良いと思います。スーパーヘビー級はこういうワンパンチが怖いです。狙いを付けて、思い切り体を振って入って行くパンチというのは意外に当たらないし、カウンターを貰いやすいです。グローブは薄いですから、そういう意味ではスーパーヘビー級の選手であれば、あて感でパチンと当てていき、対戦者の気が遠のいたり、動きの止まったところに、更にも一度同じ強さのパンチを連続で打ち込んで行く方が、自分の拳も間違い無く壊さないし、場合によってはそこからテイクダウンを取るのも良いと思います。 小椋選手は早く治して、相撲直伝の足で動く格闘性をみせてもらいたいです。ゆったりと動き過ぎているので、短く早く動くトレーニング、要するに、いわゆるスピードトレーニング等やジャンプ等の動きで、早く小さく動く事の繰り返し、そして足を使って自分を動かす練習です。いずれも辛いし、つまんない練習ですが、これをする事に因って、生きた147kgが復活すると思います。顔面を打たれない為には動かなくてはなりませんから、そういう点では仕切り直しが必要です。 ネツラー選手は良い勝ち方だった様な気がします。今回ワンパンチで倒しているので、怖いのは今度の試合で、狙いに行く様になると、逆にやられてしまう可能性があります。という訳で、今回の試合の様に軽く気付いて体が反応して出したパンチを信じて、そういう軽いパンチの練習をしておくと、今度は打ち終わった後の組み返しの様な、スタンドレスリングの強さも発揮できると思いますので、そういう所では腕を磨いておいて欲しいです。 >>> N E X T |