第7試合 ライトヘビー級戦/5分3R
▲山宮恵一郎(3R 5分00秒、判定/1-0)ブレット・ブレグマーク▲

山宮選手、実は試合の10日ぐらい前に練習中に肋骨を折ってしまいました。これは大変でした!(笑)。肋軟骨が折れてしまい、息が吸えない状態が続く中で、試合に間に合うか?といった様な状況でした。その状況下でブレグマーク選手は荷が重いかな?という、やはりそれぐらい良い選手です。身長こそ多少低めですが、83.5kgですから、そういう意味では上半身はガッチリしているし、上半身が強い割に力みがあり、重心が高くなってしまうと、そういう選手は今回のハー・スン・ジン選手の様に、意外にもろくテークダウンが取れたりするんですが、それがありませんでした。重心は下半身に置かれながら、強い上半身の使い方が凄く上手くて、パワーファイターでありながら、組みし難い対戦相手だったと思います。そんな中で山宮選手は上手くアウトボクシングをしながら、深くブレグマーク選手をコントロールしていきました。

ですが山宮選手、「あ〜ッ、やっちゃった」というシーンが試合の中にありました。世間にはコンディショニングというのが正しく伝わっていません。筋力がついたとか、筋肉がついて体重が増えたというのがコンディションだと思っています。そんなものははっきり言ってトレーニングの“ト”の字です。今更コンディショニングなんて言うものではなく、当たり前の事です。コンディショニングというのは、目指した試合に対してなるべくアクシデントが無い様に、体調の上下動が無い様に、より健康な状態で、試合の開始のゴングを、プレイボールを聞きなさいというのがコンディショニングの大前提です。それを間違えてしまうと、自分の技術はどんどん劣っていきます。今回の山宮選手も実はそういう片鱗が見えました。山宮選手は右脇腹が折れていて、そうすると彼の得意の左フックとか左アッパーは重心を右に移動させながら体を回転させなければいけません。そうすると、それをしたいのですが、右の肋骨が折れているので、体は重心を右に振っていけません。そうすると右側の肋骨をベースとして、左肩が前へ走って体を入れ替えなければいけない動作が出来ないので、基本的に左のパンチの長さが短くなります。そして自分の顔とか体の正面が相手に向き易くなってしまいます。そうすると強いパンチをカウンターで受けたりとか、打ちに行く時に先にリードパンチを当てられたりする事が出てきます。今回は、そういう1つのケガというのものが何に出たかと言うと、距離の合わせが出来なくなった左フックを強引に当てていったら、試合開始早々、山宮選手の左の拳が壊れてしまいました。私が担当の試合だったので、見ていて、あっ左の拳をやっちゃったと思いました。だからその時点で彼は開始早々に右の脇腹と左の拳が使えなくなりました。それが故に射程が短くなります。左のリードで牽制して、相手が入って来るところを合わせるという、彼の得意のパターンが出来なくなってしまいます。しょうがないので、相手を中心にグルグルまわりながら闘う事を余儀無くされてしまいます。

そんな中でもう一つ危ない時は、テークダウンを取られてグラウンドの下から切り返していく時、多分これは激痛の中で闘ったと思います。麻酔は打っているのですが、新たに壊れる事に関しては、新たな破壊が行われますから、これは当然痛いです。健康な状態でも相手が起こさせまいとしてプレッシャーをかけられる中で、その動きに相反しようとして、出力を出しながら切り返していきます。試合はそのまま切り返した山宮選手が上を取って有利に試合を進めていきましたが、今回はかなり苦しい闘いです。でも私はそれを支えたのは、グラバカに移籍したという事だと思います。でもそれはGRABAKAがそうさせたのではありません。ismからGRABAKAにいこうと決心した事で一皮剥けたという事です。単純に言えば人間が何か変えようとする時に、自分の私生活とか、自分の通常生活のリズムを変えないで、小手先だけで、この辺の筋肉を付けたら変わるんじゃないか、こんな練習をしたら変わるんじゃないかなどと思ってコンディションを考えたり、練習メニューを考えたりするトレーナーは世の中に多いけれども、そんなもので変わるようなレベルというのはアマチュアのレベルです。はっきり言って、プロと名の付くもので、パンクラスの厳しい厳しいリングの上で、自分の力を発揮すると言ったら、自分の生活とか、自分の命を投げ出す覚悟をして、大きな決心をして男が挑まなかったら、人間なんて変るものではありません。そういう意味では、私は山宮選手は今年の最後で大きなギャンブルに勝ったと思います。彼がケガをした状態で試合に臨んだのは今回だけではありません、そして結果はドローでしたが、今回ばかりは彼は立派に務めたと思います。その様な事から、ケガが癒える来春には色んな注目されるカードが出て来るだろうし、自分からそういうカードを選んでいく事になると思います。そういう時に山宮選手が闘った時には、実はGRABAKAの精神と言いますか、GRABAKAの技術等、色々なものを含めて、そういうものと、パンクラスの元々のイズム、パンクラスの魂というものを持った、前回私は新しい配合が始まりましたよとお伝えしましたが、その1つの具体的な選手として、山宮 恵一郎が駒を進め始めました。今年は注目です。

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