第6試合 第5代ミドル級キング・オブ・パンクラス決定戦 5分3ラウンド
初代・第3代ミドル級王者/現ランキング1位
ネイサン・マーコート
(ハイ・アルティチュード)
ランキング3位
三崎和雄
(パンクラスGRABAKA)
3R 5分00秒、判定/3-0
松宮智生(29-26)和田良覚(29-27)廣戸聡一(30-28)
■ネイサン・マーコート(81.9kg)
■三崎和雄(81.9kg) セコンド:菊田早苗
レフェリー:梅木良則

マーコート選手は、道場を移ったり結婚したりと、私生活ではあわただしい中で臨んだ決定戦だったと思いますが、あわただしいというよりは、チャンピオンになるべく環境を整備してるという様に考えると、並々ならぬ思いというものが彼の中にはあるのだなと思います。そういう意味ではここのところ、体調の、コンディションの部分で、試合前の状況があまり良くない事が多少あり、苦戦を強いられているのが見えたので、今回も懸念してましたが、試合が始まってみると良い滑り出しでした。対する三崎選手は、デビューしてからも一定のレベルで自分を高めて来ているのは非常に感心しますし、立派だと思います。三崎選手の唯一のアクシデント的な黒星は、マーコート選手に付けられているので、いやが上にも熱を帯びた試合になりましたし、正に新王者決定戦に相応しい試合でした。

両者、寝ても立っても巧者なので、展開は如何に?と思いましたが、3R×5分=15分、スタンドに終始した事も、お互い懐も深く、決定力もあり、試合の展開もきっちりあることから、果たして予想通りの展開になりました。左右に体を振り、入って行く、通常な三崎選手と、それをどちらかというと、オーソドックスなジャブで距離を取り、相手を見て行くマーコート選手の展開。そしてそれではなかなか間が詰まらないので、三崎選手が繰り出したのが左足を内側から狙った左ローキックです。これが実に良かったです。小さな動きで、体重もきちんと乗り、打った後に体勢も崩れず、大変良かったと思います。それが守り辛く、マーコート選手の内腿は3R目には真っ青になってましたが、凄いなと思うのは、きっちりと同じ様にローを返している事です。三崎選手は日焼けしているので判り難いのですが、三崎選手の足も同様でしたから、両者、ローの応酬でも、終始構えがあまり変らず、質の高さを感じました。ただ、一つだけアレッ!?と思った事は、正確には言えないので、言葉にするのはどうなのかと思いつつも感じた事を言いますが、いつもの三崎選手よりスタンスが少し広いかな、ということです。これはスタンスが左右に広いのか、膝がいつもより少し伸びているいる様な気がする、という印象がありました。その分、頭の揺れが大きかったです。その揺れが大きいという事は、パンチが若干、テレフォンパンチ、打つ前に相手に伝わってしまいます。そして、応酬をした時に足が止まり易く、足を止めて相手の前で打ち合いになってしまう場合が多いですし、そのパンチを左右からストレートに出し、体が相手の正面を向いてしまいます。体の真ん中が空いてしまう場合が多くなってしまうので、そこは危惧されるところでした。

試合の流れを決めたのは、マーコート選手のカウンターでした。打たれ強い三崎選手が、パンチによる尻餅、フラッシュ的なダウンが見て取れましたから、そういう意味では上手くタイミングで相手を倒して行った、というのがマーコート選手の判定の基準だったと思います。三崎選手もどんどん積極的に出て来ますから、三崎選手の取ったラウンドもありましたが、ダメージの多さ、大きさ、全体的な有効打、試合の作り方等の要所要所に、マーコート選手が上手く自分のカードを引き込みました。ですから、思ったよりも点差が開いてしまったのが、この試合の判定でした。試合内容は拮抗していましたが、パンクラスのルールは相手にダメージを与えて行って、限りなく1本、ダウンに近いモノを与えた方が勝ちというのが他のリングと一番違うところかもしれません。ポジションを多く取ったからそれが有利というのは、アマチュアであったり、そういう所で優劣を付けると言う試合であれば良いと思いますが、パンクラスはプロらしさという点から、選手に1本、ダウンを取りに行くという姿勢を表に出してもらいたい事もあり、そこが判定基準の大きな一つの要因になります。そういう点から言うと、今回はマーコート選手が文句無しに取りました、というところです。伯仲していただけに、各ラウンドでマーコート選手が有利に展開をしたというところで点差が出てしまったと考えて貰えると良いと思います。 また時が熟して、同じカードが組まれたら、今度もどうなるかは判りません。

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