第3試合 無差別級戦 5分2ラウンド

佐藤光留
(パンクラスism)

小谷野澄雄
(烏合会)
1R 2分57秒、TKO/タオル投入による
■佐藤光留(83.5kg) セコンド:渡辺大介、北岡悟
■小谷野澄雄(99.8kg)
レフェリー:廣戸聡一

体重差15kg以上の久しぶりの無差別級戦で、佐藤選手自らが望んだ試合でした。最近、佐藤選手は鈴木選手に挑戦状を叩き付けてみたり、「バーネット選手と闘いたい」と言ってみたり、分不相応で活字をにぎわすのみに終始してました(笑)。ですが以前から言ってますけど、佐藤選手は本当に良く練習をします。その内容自体が試合の箇所毎に良く見られますし、身体能力も凄く高いです。ですが、彼の試合というのは、組み立てて行く余裕の無さ、妙に単純な思考回路の為に、大変淡白な試合にばかりなっていて、自分が動いて相手を翻弄するものの、最終的には不利な体勢になるというのが彼の真骨頂(笑)で、何がしたいのだろう?(笑)、それが彼のデビューから昨今までの印象です。対してパンクラスのリングへ久しぶりに登場となる小谷野選手は、上背が無いながらもヘビー級ですから、手足の長い選手と闘う事が多く、どうしても懐深く闘えません。リーチ差から、入ろうとする最初の場面で打撃で止められてしまうというところで、烏合会・矢野選手の元、どんな技術を使い、距離感を詰めていくのかというところが見所でした。何とか間合いを詰めてしまえば、彼の体の圧力、技の豊富さから言えば勝利をものにする事は到底た易いと思ってたので、凄く楽しみな試合でした。

試合は、佐藤選手の出入りが綺麗な無駄の無い動きで始まりました。いつもなら相手のパンチを避ける為に体を大きく揺すってしまう、反応が良くて、相手のパンチが全然当たらない所で反応してるのだから、そんなに大きな動きでかわさなくても良いのに(笑)というところまで体を動かしてしまい、そして自分がパンチを打つ時には、その大きな動きの連動で行くので、頭から突っ込んでしまう為、打撃で体を振ってしまうと、結局は彼の得意な低いタックル等の、レスリングの土壌が上手く使えません。佐藤選手にはそういう試合が良くあるのですが、今回は上半身が凄く大人しく、映像を見ることが出来る方は、彼の開始早々のワン、ツーパンチを良く見て下さい。物凄く速いです。速いと軽いパンチが多いのですが、体重が乗ったとても良いパンチで、ワン、ツーのどちらが当たっても、破壊力の大きいものがたいへん速く出ています。あの形から、タックルに入られても切れるパンチを出してました。私が担当レフェリーでしたが、それを見てびっくりしました。その中で小谷野選手も体を振り間合いを横軸で保ちながら、中に入ろうとしました。そして逆にパンチを打ちながら、そうやって入っていくかという、お互いの意図が見え、凄く面白かったです。佐藤選手は今回ボディーへのパンチが多かったです。これなども、彼が練習で何をしていたかというのが見て取れて面白い点ですが、距離を保つ為にローを使い、相手のガードを下げさせ、もしくは相手のセンターを取り(総合では膝があるので凄く危険なのですが)動きを止め、足できちんと踏み込み、そこからパンチを出してるので、ボディーもちゃんと決まっていました。その形から展開して、顔面のパンチの流れの中から、グラウンドに持ち込み、最終的にはハーフマウントからパウンドでタオル投入という結果でした。私は投入まで止めませんでしたが、これは何故かと言うと、何発かは入ってましたが、顔の側面で逃げてる形でしたから、有効打としてのパウンドはあまり入ってませんでした。それ程のダメージも無かったのですが、セコンドからは背中しか見えない形でしたから、タオルが投入されたのだと思います。ただ、あの形での投入は間違いではないし、佐藤選手の殴り勝ちでした。佐藤選手の闘い方に今回変貌がありました。何かと言うと、いっぱいちょこちょこ動かなかった事です。何故か?

これは今大会の全体の流れから見えたテーマの一つになりますが、佐藤選手は右膝にテーピングをしていました。これは大会の前週の日曜日にプロ・アマ キャッチレスリングトーナメントがありましたが、それに彼も出場した階級で優勝しました。そして明けた金曜日には次に課した無差別級勝利を通過し、初めて新年が明ける、と年末に自身の内側で、プロとしての存在意義を具現化する為にも、ハードルを立てた様です。そのトーナメントで優勝しましたが、その一試合中に右膝の靭帯を伸ばしてしまいした。膝がグラつき、細かい靭帯断絶があるようで、腫れ上がりもし、外科的判断でいうと2週間以上の安静が必要でした。彼がケガをした日、私は地方で仕事をしてる時に電話をして来やがって(笑)、一方的(笑)に明日からヒロト道場に通うからと留守電を残して、図々しくも(笑)月曜日から木曜日まで通って来ました。ですが、木曜日に彼が試合前の軽量に来て、その後膝を見ましたが、その時点では月曜日よりかは良くなっていましたが、ただ試合となると私の中では“?”でした。もしその時点で可、不可を出さなくてはならないのなら、私は不可を出しましたが、どうしても出場したいなら、ここで出場に向けての膝の準備をして、当日会場で診て、その時点で不可をだしても良いのであれば、そこまで引っ張るが、それが嫌ならば、今ここで私から社長に話しをするけどどうするか?と尋ねたら、当日決定して欲しいという事で、会場で最終チェックをし、テーピングを巻き、ジャンプ、しゃがむ等の基本的な運動検査をして試合に出ました。彼は痛くないと言ってましたが、多少の痛みはあったと思います。

ですが、自分の体重は支えられますが、相手の体重を持ち上げたりすると、しかも無差別級ですから、膝の強度は足りなくなるかも知れないから、その時は直ぐに止めるという、ハンディキャップのある形で試合をしました。なので、前述の動きに関して、それが幸いしたのかもしれません。無意識に足をかばい、最小限の動作で闘わなくてはならない必死さに、実は冷静な試合展開になったりした部分が凄く感じられた試合でした。小谷野選手も健闘しましたが、それを上回った佐藤選手の必死さが光った試合でした。

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