セミファイナル ヘビー級戦 5分3ラウンド

謙吾
(パンクラスism)

桜木裕司
(掣圏会館)
3R 0分06秒、KO/左ハイキック
■謙吾(99.2kg) セコンド:高橋義生、田代勝久トレーナー
■桜木裕司(93.2kg) セコンド:瓜田幸造
レフェリー:梅木良則

一言で言うなら“大逆転”です。ここのところ試合に精彩の無い謙吾選手が、大変良い立ち上がりでした。これも映像で見ていただければわかりますが、少し構えが変わっています。フェイントのパンチが入らなくとも、相手をコントロールしながら間合いを詰め、そこからタックルで入って行きました。その部分でもう少し思い切りが良ければスパッと決まると思うのですが、それでも良い展開だったと思います。1、2ラウンド共にタックルで倒し、ハーフマウント、パウンドという流れの攻撃で、桜木選手のダメージは2ラウンドの時点で相当きつかったし、その終了時点では、かなり追い込まれてたと思います。ところがこの試合はここからです。2、3ラウンド間のインターバル時にセコンドから本当に厳しい指示が飛びました。最後は水をぶっかけられてました。リングの内外に敵がいるという感じです。それで私が思ったのは、桜木選手は謙吾選手と闘いながら、掣圏会館の躾、に対しても闘っていかなければならないという、向かっても下がっても地獄です。その時彼は何を決意したかというと、「死んで来ます」と言って彼は出て行きました。そういう指示があったんです。水をぶっかけられ、何を痛そうな辛そうな顔をしてるんだ、そんな事を教えた憶えは無い、そんな様相を見せるぐらいなら、潔く木っ端微塵になって来い!ぐらいの勢いで彼は叱咤されました。「それでも辛いのは俺だよ」と思いつつ闘う選手もいる中、これは躾という事になってきます。現在では体育会系のしごきだ何だかんだとくだらない事を言ったり、ナンセンスだと言うかもしれませんが、厳密にその精神で左ハイキック1本で彼は勝ちました。これがすかされたら、結果は1、2ラウンド同様だったかも知れません。ですが、前にも後ろにも行けない彼には、そんな事を考えてる余裕はありませんでした。だからこそ思い切りの良い技で攻めて行くしかないと腹を括って出したキックが決まりました。謙吾選手は決っして油断したとは思いませんが、立ち方が違っていたので、優位に試合を進めているという緩みはあったと思います。3ラウンド開始早々、あ〜抜けてるなと思いました。

アルボーシャス選手の試合のように、最後まで倒す/倒される、という試合を桜木選手がしようとしたのと、勝つ/負ける、で考えた謙吾選手との差が、大逆転に生きたような気がします。掣圏会館のセコンドの先生はここでそういう事を伝えたかったと思います。謙吾選手の新しい試みは、実際に試合を優位に進めた事からも、ファンの皆さんには通じていると思います。今回、結果を出ませんでしたが、小さな結果は出てますから、今の形で必死に練習し歩んで行き、必死になれば今度は謙吾選手が大逆転する試合が必ず来ます。桜木選手は良い勉強をしました。先生からもっと指示を仰いで、もっともっと強い相手と闘って下さい。この大逆転で凄かったでは無く、その基盤にはもの凄く人間臭い世界があり、それがどんなスポーツにも最も大切な要素なんだと、今の格闘技ファンには良く知ってもらいたいと思います。そういう意味で本当に立派な試合でした。

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