第4試合 ヘビー級戦 5分2ラウンド
ランキング2位
李世学
(和術慧舟會RJW)

桜木裕司
(掣圏会館)
2R 3:33、ギブアップ/肩固め
■李世学(99.4kg) セコンド:竹内出、和田拓也
■桜木裕司(94.2kg) セコンド:瓜田幸造、長谷川秀彦
レフェリー:和田良覚

今回私はレフリングという場所から干されてしまいまして(笑)、初めてマイクロフォンサイドで解説という物をやらせていただきました。その際事前に、どの試合が一番楽しみでしょうか、というコメントを求められ、実はこの試合を上げました。何故かと言いますと、男 対 男の闘いという感じが事前にプンプンしていました。その部分では凄く個人的に楽しみな試合だなと思えました。その私の思いが通じたのかどうかは別として、きちんと結果を出してくれた事に成りました。
桜木選手が大逆転勝ち、一発逆転勝ちを3試合続けて、この間の九州の試合では自分らしさみたいなものを押し出して行き、ここのところ選手として台頭し、凄く楽しみな選手として位置づけされていると思います。李世学選手は前回とはリングネームを変えて、再デビューという事ではありませんが、試合前その辺の意図を聞きましたが、年齢も30才になった事だし、自分の進退として、目指すファイトスタイルにきっちりと変えたいという事で、人間的な思いみたいな物が強く感じ取れて、またそういう事を彼が語っていて、見方としてはヒューマンファクターの部分が鮮やかな背景となり、凄く面白い試合でした。今取り沙汰されている選手の中で、ビジュアルの要素も含めて、また若い人達もそういう物に憧れて選手になる事も少なくないのですが、桜木選手はそういうものへのアンチテーゼとして、命を懸けて闘うという物が大袈裟といえばそうなのかもしれませんが、それを心に記して、絶対負けない、絶対に屈しない、そこが一発逆転野郎の面目躍如とは思います。桜木選手の言葉で言うと、“実は時間がないんですよ”と。その中で、掣圏会館らしい修行の仕方、掣圏会館の選手らしい姿、そういう物をアピールしたいというところで、意地と意地の張り合いの様な試合だったと思います。試合は両者とも自分のペースで行きたいと語っていましたが、先にリードを奪ったのは李選手でした。今回は本当にプライベートも選手としても、どうしても今迄の自分を払拭するんだというところで、打撃を良く見ながら足できちんと入っていき、横着して手から、頭から入っていくという事をしませんでした。それがどんな状況でも間合いを詰めて行く李選手の動きに対して、桜木選手が距離を合わせて闘おうとしていただけに、あっというまに組まれる形になってしまい、そこのところで桜木選手はらしさが出せなかった様に見受けられました。懐に入られてしまい自分の闘いが出来ず、そこからはどんどん李選手の独壇場でした。丁寧に上半身でプレッシャーをかけながら、左右に投げられるだけのポジショニングを取り、内側に引き倒す形でその中でサイドポジションに移行しながら攻撃という形で、1ラウンドはずっと固めて、そこから中々動けない状態にして、細かい鉄槌とパウンドの組み合わせでの攻撃でした。2ラウンドに入ってからも同様でしたが、桜木選手はそこからなんとか脱出して、一旦はコーナーに逃げ帰って来られるのですが、フィニッシュへもそこからが始まりで、同じ様に正面から組んで、桜木選手の右側をコントロールしながらテイクダウンを取って、そこから流れる様な形の中で、肩固めに入って行きました。

桜木選手は固く行き過ぎて、今回はスタンドレスリングから何から、全てコントロールされてしまったのが大きな痛手でした。もう少し思い切りのある打撃が出来たら面白かったのですが、腰の開く角度等、構えのそういう部分も少し修正して、自分のスタイルをもう一度作り直して、仕切り直しという形だと思います。
李選手は、正にお互い自分の指針、これだけは譲れない、という中で結果を出したというところでした。そういう事で、今迄勝っても負けても自分の心持がすっきりしなかった男が、勝ってホッとしながらも、意気揚々とリングを背にする姿を見て、本当に感動しました。詳しくは話せませんが、彼がここ数年心に決していた事、それをきちんと自分の中で消化しました。自分が動いて、動いて、動いて、苦しい中で、何かを掴むという事を目指したいと語っていた通りに彼は動けて、その様に闘えた、物凄く価値のある一勝でした。この後勝ち癖を付けて、李選手、正に“リ”スタートという形で更なる旋風を巻き起こしてもらいたいなと思います。
本当に男と男の闘いといいますか、凄く清涼感を感じた試合でした。

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