セミファイナル キャッチレスリングルール 無差別級戦 5分2ラウンド

近藤有己
(パンクラスism)

矢野卓見
(烏合会)
2R 5:00、判定/ドロー
判定:梅木良則(19-20)和田良覚(20-20)岡本浩稔(20-19)
■近藤有己(87.5kg) セコンド:北岡悟、金井一朗
■矢野卓見(67.9kg)
レフェリー:廣戸聡一

近藤選手がどんなグラップリングテクニックを見せるか、逆に体重差が20kgある中で、矢野選手が技術でどれ位翻弄するのか、そこが焦点でした。その中で、矢野選手の風貌と、客観的、第三者的に見ると、ファインティングスタイルに騙されてしまいます。力が入っていない様に見えますが、あれは嘘です。かならずどこかで体を支えています。二本の足、もしくは相手の体を使ったり、コーナーを使ったりという様な形の中から、常に自分が安定して、その中から仕掛ける為に、アウターだけは緩ましてある、そういうスタイルです。だからあれだけ切り返しと、仕掛けが速いんです。きちんと立っている、という筋肉を律して、それを全て絞めるという力に転換出切るのが矢野選手の真骨頂であり、彼の強さの秘密です。でいて、これはしっかりした修行をしていかないと、中々誰もが出切る域ではないと思います。そういう意味では本当に名人という域に近づこうとしている矢野選手の闘いぶりというのは凄く楽しみではありました。
近藤選手は東洋の神秘と言われる、矢野マジックにどういう風に不動心で対応するのだろうというところが、この試合の一つの見所だったと思います。

試合は1ラウンド、矢野選手がゆっくりゆっくり近藤選手の出方を見ました。近藤選手は、さすがに非凡だなと思ったのは、通常の選手だったら簡単に離れた間合いから接触していって、手探りの状態から何となく組みに行ってしまいますが、それをしませんでした。手探りなんですが、納得しないものは直ぐに捌く、崩す、突き放しました。要するに自分の形意外は認めない組合でした。矢野選手も自分のピンポイントに近藤選手が入って来るまでは、のらりくらりとしているようにして待ち構えていました。実際、攻めながら手探りする近藤に対して、受けながら手探りで待ち構える矢野、という展開があり面白かったです。その間、テイクダウンを取って、またはテイクダウンを取らせて自分の形に引き込もうとする矢野選手、それに対して新しい局面になればなる程、近藤選手の対応が早かった事、これはそういう意味で、展開が速く、面白い1ラウンドでした。2ラウンドを通じ唯一の見せ場が、矢野選手の足を取りに行った場面です。一般的に足が解けたと思われた後、実は足が未だフックしていて、普通の選手ならばあそこまで逃げられないし、出来たとしても未だ足が絡んでいて、矢野選手が正座した形で、近藤選手をコントロールするところがありますが、その時に正座しているだけで角度が悪ければ、それで足首が決まってしまいます。そういう所が秀逸でした。近藤選手もそれが分かるので、早目、早目にそれを上手く抜こうとする所、また逆にそれをフェイクをかけながら顔色一つ変えずその足首を何とか決めようとしている矢野選手がいて(笑)、見所としては凄く面白かったです。こういう試合になるとレフェリーは特等席になると思います。皆さんも一度機会があればされてみたら如何と思います(笑)。そんな中での、試合を積極的に動かしつつ、自分のポジション、2ラウンド4分前後から近藤選手のプレッシャーが相当強くなりました。矢野選手としたら、下になりあれだけ強いプレッシャーを受けてしまうと、なかなか自分の返しが出来なくなってしまいます。要するに矢継ぎ早に攻撃が入って来た時に、矢野選手が苦しみました。ですから空間というのは、距離だけではない、という話を良くしますが、間合いというのは、その中にリズムも含まれています。ですから知らず知らずの内に、物事をする所作が相手ににてしまったりしますが、矢野選手のリズムに合わせられてしまいますが、それを自分からわざわざリズムを変えて仕留めに行くのも矢野選手です。それをさせない近藤選手との攻防があって、近藤選手の動きのある攻撃と、矢野選手の動きの少ない攻撃という部分でのコントロールがありました。ですから判定は技の完成度という事で三様となりましたが、それ程拮抗した試合だったと思います。質が高く大変見所があったと思います。

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